2025 『大寒』 | 寒気に耐えて獲得しようとするもの

二十四節氣

大寒 daikan

恵那山麓では厳しい寒さと共に、冬の真骨頂を感じることができるのが大寒。この頃は寒波がやってきて冷たい空気が肌に触れ、身の引き締まる感覚をおぼえます。一面に広がる白い雪景に太陽の光が当たると、眩しく目を細めます。そして恵那山の雪化粧の美しさに心打たれます。足元は通った車が道に残した車輪の跡のわだちを避けながら、転ばないように歩いています。

HANANOKI FACTORY

恵那山麓は、東濃檜とうのうひのきが有名で、木に関わる職人も多い地域です。良質な木材が確保できることが、各地で木工業が盛んな理由の一つだと聞きます。そこで中野方町の工房「HANANOKI FACTORY」の矢崎さんを訪ねました。家具職人として独立して四年目の工房は、美しい道具と木材で整っています。 

 

寒の入りを迎えた工房での作業は冷え、職人の手も寒さで赤くなります。どうやらこれから雪が降る予報。ストーブの日でかじかむ手を温めながら木と向きあう日となりそうです。

この日はクルミの材を使ったテレビボードの制作でした。美しいあられ組の強度もぴったりで熟練された手仕事に感服しました。カンナを当てて引く姿も美しく、鉋から飛び出してくるかんな屑が、透き通って見えます。ノミもノコギリも道具はサイズごとに並べられています。日本の道具は使いやすく理にかなった構造が美しく、意匠的と表現されていました。

日本では「無駄を省く」という考え方が重視されてきたと思います。さまざまな道具にも日本らしさが詰まっていることを知り、日本の強みを再認識しました。矢崎さんは世界を旅する経験もされています。日本の道具への敬意が、自らが使う道具に表れていると感じます。

 

冬の冷え込みが厳しい日本の山間部では、古くから寒修行が行われてきたそうです。寒修行は心と体を鍛え、寒さの中で自身の限界に挑むことで、より高い境地を目指すとされています。寒気に耐えて獲得しようとするものは、技術はもちろん心であると、この工房からも教わったような気がしました。

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